家庭教育学級 2019.6.27

子どもの豊かな心を育むために、いま親ができること、すべきこと

子どもたちに一番影響を与えるのは誰かといえば間違いなく母親です。学校がいくらがんばっても、たかが知れています。でも、たかが知れているからこそ全力で取り組むのが私の信念。たとえ小さなことでも全力で取り組んでいます。

今年度の家庭教育学級の講演会は、村越新校長先生に講演を依頼しました。毎日校内をまわって子どもたちに優しい声かけをなさっている村越先生が、子どもとの関わり方をお話してくださいました。

豊かな心を育むためには、豊かな体験をすること

先日、わんぱく相撲入間大会がありました。豊岡小からもたくさんの児童が参加しました。

 

この大会に出た子供は、たった一日でいろいろな感情を持ちます。喜び・悲しみ・うれしい・苦しかった・応援した・目標を持った・家族が応援してくれた…。豊かな心を育むには、豊かな体験をすることです。

 

ここで経験した豊かな気持ちは、次に動き出します。例えば、「またわんぱく相撲に出てみようかな」とか、「一緒に出場したあの子と遊んでみよう」「次は違うことに挑戦してもらうかな。」など。家に帰っても食卓でいつもと違う話題が出て、そこでまた豊かな気持ちになったでしょう。「体験」は、大きいんです。


大人のまなざしが教育の原点。

お子さんが初めて歩いたことのことを思い出してみてください。たとえ周りよりも多少遅くても、いつかできるだろうと待っていたと思います。隣の子が1歳までに歩いたから、あなたも明日までに歩きなさい、なんて言いませんよね。また、歩いたときに「右足はこうしなさい!」なんて、下手な小言は言っていないはずです。そして、大人は子どもの前で歩いている姿を見せている。見なさいなんて言わなくても子どもはそれを見ているから歩けるようになるんです。

 

初めてしゃべった日のことも思い出してください。せかすことはせず、しゃべるまで待っていたと思います。しゃべった言葉を聞いて、「発音が悪い!」なんていわないですよね?親は見守っています。子どもは大人がしゃべることを見ている。だから子供はしゃべるようになるのです。

では今、子どもが作文を書くときはどうでしょうか?

大人は子どもたちが書くのを待っていられません。文字が正しくはねてないとか、小さい「っ」がついていないなどと余計な小言を言ってしまう。だから子どもは作文が嫌いになってしまうのです。

 

小言をいう前に、われわれは書いている姿を見せているでしょうか?子どもの前で、本を読んでいる姿を見せているでしょうか?大人がやっていれば、子どもは自然とやるようになるものです。その、当たり前のことをつい忘れがちになってしまいます。

 


前向きな声かけで子どもの行動は変わる

何年かまえに話題になった言葉「ペップトーク」はご存知ですか?Pepとは、元気や活力といった意味です。野球やバスケ、アメフトなどたくさんのスーパーアスリートを輩出しているアメリカで、監督やコーチが選手にかけている言葉のことです。脳に元気が出る言葉を送るのです。

 

たとえば野球選手に「三振するなよ」と言うと、脳は「三振」という言葉を認識します。「ホームラン頼むぞ」といえば、脳は「ホームランか!」と前向きになります。人間のからだは脳が命令を出しているのです。だから、脳が元気になる言葉をかけてあげることが良いようなんです。

 

そんな「ペップトーク」を知った頃にこんなことがありました。

以前勤務していた学校で、毎日けんかをしてしまう低学年の子がいたんです。お母さんにお話を聞くと、毎朝登校するときに「今日はたたいちゃダメよ。特に女の子をたたいちゃだめよ」と言っていたそうです。そこでお母さんに、2週間でいいからその言葉を言わないでくださいとお願いしました。もちろん、学校でも教師が言わないようにしました。すると、驚くほどその行動がなくなったのです。もしかしたら、言葉が行動を引き起こしていたのかもしれません。

 

本校でも、子どもが廊下を走っていたら「走っちゃダメ」とは言いません。「廊下は歩きます」と声をかけます。「友達に優しくしてね」と毎日言えば、おそらく子どもは「優しくしなくちゃ」という気持ちになるでしょう。「けんかはだめ」というと「けんか」という言葉だけが脳に残ってしまうようです。

 

前向きな言葉をかけると、子どもの行動は変わってきます。

将来、学校を支えてくれる子どもを育てたい

昔の豊岡小学校の門柱がまるひろの隣に残っています。

豊岡小学校は、今年で開校131年目です。先日、新聞に「地域の伝統校」と取り上げられました。

人口が減っていますから、今後入間市内でも学校が統合される計画になっています。そのような中で、私が使命を感じていることがあります。小学校や中学校でいい思い出を作った子どもたちが、進学して成人してもできればこの地域に残ってほしいことです。この地域で社会人になって、結婚して、子どもができたら、その子に豊小に入学してほしい。その時に、母校をサポートしてくれるような大人になってほしいのです。学校が存続できなければ、地域がなくなります。30年後、40年後の地域の未来を考えて、そこまで見据えた教育としないといけないと真剣に思っています。

 

 ▲写真 まるひろ入間店のとなりの公園にある昔の豊岡小学校の門柱


入間市立豊岡小学校 校長 村越新先生

 

30代目の入間市立豊岡小学校校長。入間市内の全地区で教員経験があり、今年豊岡小校長に着任。影響を受けた先生は、ドラマ「熱中時代」で水谷豊が演じた真っすぐ子どもと向かい合う小学校の先生、北野広大。好きなタレントは、長渕剛・ダウンタウン。東京都出身、入間市在住。